佐藤卓己 編『戦後世論のメディア社会学』柏書房(2003)


戦後世論のメディア社会学 (KASHIWA学術ライブラリー)

戦後世論のメディア社会学 (KASHIWA学術ライブラリー)


読み読み。

論文集。


戦後における世論を輿論(public opinion)と世論(popular sentiments)
にわけ分析したメディア論。


学生運動関連は
■井上義和
「スネーク・ダンスのテクノロジー−街頭を覚醒させる土着的身体−」(p.143-)
佐藤八寿子
「レトロスペクティブな革命−70年代フォーク・ソング−」(p.167-)
■宮武実知子
「「受験地獄」の黙示録−朝日新聞「声」欄に見る教育「十五年戦争」−」(p.193-)



■本書の課題

活字と放送のメディア特性からすると、デジタルな輿論とアナログな世論とい
う図4の定義は、一見すると矛盾しているように見えるかもしれない。しかし、
活字は断片的で抽象度の高い記号(文字)であり、放送は連続的で具体的なイメージ(音声・映像)を提供する。活字メディアの内容を分類し計量化することは、放送メディアのそれに比べれば容易である。「メディアはメッセージである」というマーシャル・マクルーハンの有名な定言に従えば、こうした「
メディア」そのものの性格が、それを伝える「内容」以上に輿論/世論の形成に大きな影響を与えた
と考えられよう。内容分析による定量化可能な輿論ではなく、全体としての世論をメディア論として考察することが本書の課題である。
(p.18)

→国民総動員体制から始まった「輿論の世論化」
 ←今こそ、輿論と世論は分離し、その上で「世論を輿論化」することが必要。



輿論(public opinion)と世論(popular sentiments)

こうした世論と輿論の区別が曖昧になっていくのは、参戦国がその全国力を総動員した第一次大戦の勃発、すなわち総力戦体制の登場を契機としている。一部のエリートが理性的に討議して輿論が形成された「ブルジョア(市民)的公共性」(J・ハーバーマス)の時代はここに終わり、二〇世紀は大衆の喝采拍手、つまり共感によって合意が形成される「ファシスト(大衆)的公共性」の時代として幕を開けた。
(p.16)


↓↓↓

輿論(public opinion) 世論(popular sentiments)
加算的(デジタル)な多数意見 定義 類似的(アナログ)な全体の気分
19世紀的・ブルジョア的公共性 理念型 20世紀的・ファシスト的公共性
活字メディアのコミュニケーション メディア 電子メディアによるコントロール
理性的討議による合意=議会主義 公共性 情緒的参加による共感=決断主義
真偽をめぐる公的関心(公論) 判断基準 美醜をめぐる私的心情(私情)
名望家政治の正統性 価値 大衆民主主義の参加感覚
タテマエの言葉 内容 ホンネの肉声

【図4:輿論と世論の定義】(p.16)