David Owen 100

結論26-
留意点
（1）成熟を自己自身の意志を意欲することと同一視すること
（2）批判的であり、目的として個々人に向けられた理性の公的使用と、道具的であり、
個々人を物として扱うことを要求する理性の私的使用との区別

　カントは、
・二つの意欲すること（自己自身の意志・道徳法）の同一視
・理性の私的使用の衰退
　⇒いずれの根拠づけに失敗
　　→近代思想に対して二重の問題機制を遺す。
　　　（1）自律を成熟として思考することに関する、思考と時間の関係、哲学と歴史の関
係の問題
　　　（2）成熟を達成することに関する、理性の批判的形態と道具的形態の関係の問題
　　　　⇒次の要請を伴う。
　　　　　―カント以後の思想は自らの歴史的特定性の問題を正面から見据えなければなら
ないこと。
　　　　　―この問題に関してニーチェ、ウェーバー、フーコーのテクストにおける倫理と
政治の関係（自律をめぐる倫理的思考と近代における自律実現の諸条件をめぐ
る政治的思考の関係）を、検討すること。