David Owen 85
David Owen(2002)『成熟と近代ニーチェ・ウェーバー・フーコーの系譜学』
宮原浩二郎・名部圭一 訳、新曜社
序
本書の核心にある主題的関心
・内在的批判の一形態としての<系譜学>(genealogy)の出現とその展開を追跡
すること
・この批判形態のもつ倫理的・政治的な性格を解明すること
批判の問題
批判(critique)は何を意味しているのか?
――カント以後の社会・政治思想:<近代>に対する省察(reflection)を通じた
<成熟>の追求とみなす
批判的省察に携わること:三つの問いを提起すること
・成熟とは何か?
・近代性とは何か?
・成熟と近代の関係はいかなるものであるか?
【ハーバーマスの批判】
ニーチェ的近代批判→ニヒリズム的欠陥を持つことを暴露
近代性の全面的拒否…ニーチェ、アドルノ、ハイデガー、デリダ、フーコーの哲学
の特徴
→新保守主義政治との不本意な共犯関係を露呈するという遂行的矛盾をもたらす。
―「批判」の一貫性の欠如を例証し、合理性の非合理性への屈服、思想の権力
への屈服、権利の力への屈服
←この議論:ヘーゲルこそが近代の哲学的言説の創設立法者であるという、ハーバ
ーマス自身の物語に大きく依存している。
本書:近代のもう一つの言説の存在を提示
―ニーチェ的伝統はカント思想のはらむ諸問題に対する省察から生まれたもの
ニーチェ−ウェーバー−フーコーと展開されるカント以後のもう一つの批
判形態
→ハーバーマスが自らをその内に位置づけるヘーゲル的伝統に対するオルターナティ
ブを提供する。