David Owen 86
【二つの伝統の差異】
二つの伝統…・ヘーゲル−マルクスーハーバーマスと展開される批判的伝統
・ニーチェ−ウェーバー−フーコーと展開されるカント以後のもう一つの批判形態
――差異を確認するために三つの問いに立ち返る。
・成熟とは何か?・近代性とは何か?・成熟と近代の関係はいかなるものであるか?
<成熟>:ヘーゲル:自己実現として、自己の真なる存在を倫理的主体として実現す
ること
:ニーチェ:自己克服として、人が在るところのものに至る不断のプロセス
として、道徳外的主体性としてのもの
<近代>:ヘーゲル:理性の乖離と理性の自己自身との和解
:ニーチェ:真理への意志がそれ自身を問題として意識するようになる事態
<成熟と近代の関係>:ヘーゲル:成熟=近代の目的、近代が自らになした約束の履行、
近代の本性の実現
:ニーチェ:関係は両義的なもの、近代は成熟の可能性を創造
するとともに掘りくずす
⇒批判の活動:ヘーゲル:近代の本来的在り方に対する自覚の高揚を通じた近代性の再保証
:ニーチェ:批判の活動は近代の両義性との対立、成熟の実現を促進するもの
ヘーゲルとニーチェは異なる見解を示している。
本書の課題
――二重である。
・ニーチェ、ウェーバー、フーコーは批判の問題に関して近代思想における独特の思考
軌道を描いているという主張を、カント的文脈に位置づけることによって起訴づける
こと
・独特の批判形態としての<系譜学>の展開を追跡し、この批判形態のもつ倫理的・政
治的性格を批判的に検討すること