『支配の社会学Ⅰ』64【家父長制的支配と家産制的支配(p.143-)の続き】


純粋に人格的な服従関係にもとづく官職
――没主観的官職義務の思想が、全く一般的に欠けている。
  ―官職プッリュンデまたは専有された財産として取り扱われるようになれば完全に
消滅する。
  ―権力の行使
   …官吏個人の支配者権なのであり、神聖な伝統による明確な制限の枠外では、彼
もまた、ヘルと同じく、そのときどきに、換言すれば個人的な恣意と恩寵とに
したがって、決定する。
    →家産制国家の法形成の領域
     ―2つの領域が並存する。
      :一方においては、不壊の伝統被拘束性
      :他方において、合理的規則の支配がヘルおよびその官吏の「官房裁判」
によって代置されること
     ⇒官僚制的な「没主観性」と、同一の客観的法の抽象的妥当に基礎を置く・
「人物のいかんを問わぬ」行政の理想との代わりに、正反対の原理が行われ
る。
      …具体的な提訴者と彼の具体的な願望とを考慮した態度決定と純個人的な関
係・寵愛の表示・約束・特権とに依存している。


ヘルと官吏との間の−常に不安定な−力関係
――ヘルの授与する特権や専有
  ―「忘恩」の場合には撤回しうる
  ―一切の諸関係が個人的関係として理解される結果、ヘルの死後におけるこの効力は
不安定
―土地の贈与の場合
    ―不安定な故に、特権や専有をヘルの後継者に提出して、その確認を受けた。
     →この確認作業
      …〔官吏の側からのヘルの〕義務の要求とみなされた。
       →2つの道を切り開く
        ―撤回可能な状態から「既得権」として永続的専有への道を切り拓くこ             
         と
        ―ヘルの後継者に、かかる特殊権益を破毀することによって、自己の恣
意のために再び自由な血路を切り拓く機縁を与えること
         →後者は近世西洋の家産=官僚制国家の建設において利用された。


純事実的な慣行
――(ヘルとの関係における官吏の権能、官吏に対するヘルの力が、仲間権や官職の専有
によってステロ化されている場合)両者相互間の力関係を広汎に決定
  →中央権力の偶然的な弱体化が長期にわたる場合には、この弱体化が純個人的な理由
にもとづいている場合にも、中央権力に不利な新たな慣習が成立することによって、
中央権力を破砕する機縁となる。
   →このような行政構造の地盤の上では、自己の意思を貫徹するヘルの純個人的な能力
が、彼の名目上の勢力の−常に不安定な・流動的な−現実的内容を決定する上に、
特に高度な力を持っている。
    ―この限りにおいて、「中世」を「個人の時代」といったのはもっともなことである。