『支配の社会学Ⅰ』57【家父長制的支配と家産制的支配(p.143-)の続き】


8 家産制的官吏の給養、実物給与的プリュンデと役得プリュンデ


家産制的官吏
――その典型的な物質的給養をもともとはヘルの食卓およびヘルの財庫に見出した。
  ―ヘルの食卓が彼らの扶養に決定的な役割を果たすことをつとにやめてしまって
から後も、宮廷に滞在するとき、ヘルの食卓で食事にあずかる権利を、どこで
も極めて長い間保有していた。
官吏がこの親密な共同体から離脱すること
――直接的なヘル権力が弛緩することを意味する。
  …官吏機構が大きくなると、官吏をその経済的な報酬の点で、完全に自己の恩恵
と恣意とに依存せしめ、全く不安定な地位におくことができなくなる。
  …この点に関する規則が一旦力を得てくると、これを破ることは危険になる。
  ⇒独立の世帯を持つ家産制的官吏については、極めて早くから、家計内部で給養
するという方法から「プッリュンデ」あるいは「レーエン」を与えるという方
法に発展した。


プッリュンデの考察
――この重要な制度は極めて多様な運命をたどって発展した。
プッリュンデの種類
―(1)一生間の・実物給付:実物給付プッリュンデ
   ―実物給付は後には譲渡可能になり、またその部分(例えば毎月の個々の日に対
する実物給付の請求権)も取引の対象になった。
    →近代的な国債利子の一種の実物経済的先駆現象が生じた。
―(2)役得プッリュンデ
   ―ヘルあるいはその代理人が職務行為の代償として期待しうるところの、一定の
役得を授与すること。
    ―官吏をヘルの家計から更に一層独立させる。
     ―このプリュンデは、より一層家産制外的な起源をもつ収入に依拠している。
―(3)土地プッリュンデ
   ―この場合には、プッリュンデは最も「レーエン」に近づく。
   ―プッリュンデ受領者の地位を、ヘルに対して独立的たらしめる方向に著しく推移
させることを意味する。


ヘルの官吏や「従士」たち
――独立の経済と独立の経済的危険とを彼らに負わせるような・食卓共同体からの分離を、
必ずしも常に歓迎したわけでは決してない。
しかし
――彼らの側においては
  ―家族をもち独立性を得ようとする願望が、圧倒的な力をもってこの方向に駆り立てた。
――ヘルの家計の側においては
  ―直轄経済の負担を軽減するという必要性がすでに、同じ方向性を促進した。
   …直轄経済は食卓仲間の数の増加に伴って支出の増大、統制の困難性の増大、収入の
変動の浮沈などにさらされた。
――家族をもつ俗人官吏
  ―食卓からの分離はプッリュンデの単なる一生間の専有を超えて、世襲的専有の方向へ
の発展を生み出した


この過程がプッリュンデの地盤の上で進行したのは、特に、家産=官僚制的な近代国家の最
初の時期においてであった。
――最も著しかったのは教皇庁、フランス、およびイギリスにおいてであった。
――この場合、普通は役得プッリュンデの形がとられる。
  →個人的に信頼された者や寵臣が、実際の仕事をする多少ともプロレタリア的性格の代
理人を任命する許可とともに、役得プッリュンデを授与される。
  それか
  →定額の賃貸料または一時払金と引きかえに、申込人に与えられた。
   ←プッリュンデ〔したがって官職〕は、賃貸人または買受人の家産的財産になり、世
襲性や譲渡可能性に至るまでの種種さまざまの慣行が見られる。
    ―それは第一に官吏〔すなわちプッリュンデ保有者〕が申込人の補償金支払いと引
換えに、彼のプッリュンデを放棄するが、しかしこの際、ヘルに対して後継者推
薦権を要求するという形で現れる。
    ―あるいは、全体としての官吏団が、この推薦権を要求し、このような場合には、
仲間の共通の利益のために、他人への〔プッリュンデ、したがってまた官職の〕
譲渡の諸条件を規整した。