『支配の社会学Ⅰ』56【家父長制的支配と家産制的支配(p.143-)の続き】


被支配者の官吏に対する関係
――官吏は伝統の力と、臣民の服従心と給付能力とを維持せんとするヘルの
利害関心とを考慮して、なおかつ「なしうる」ことは、しても「差し支
えない」のである。
  ―官僚制的行政に見られる明確かつ拘束力ある規範や行政規則は存在し
ない。
  ―異例的な問題や客観的に重要な問題についてそのつど処置がきめられ
た。
  ―ヘル権力の全領域について同様にそのつど処置された。
  ⇒官吏によるヘル権力の行使はその全体が2つの領域で動く。
   …ヘル権力の行使が拘束された進路を歩む領域
   …ヘルの自由な個人的恣意の領域
   ―ヘルの命令への不服従は、減るの罰令権に対する違法な侵害であり、
このような侵害を犯せば、違反者は、イギリスの用語を用いればヘル
の慈悲に、すなわちヘルの船団的刑罰権に委ねられる。
    ―伝統とヘルの罰令権とは、いたるところで、調停しがたい境界争い
を演じている。


家産制的官吏の全地位
―官僚制とは異なる。
―ヘルに対する官吏の純人格的服従関係の結果なのである、
―臣民に対する官吏の地位は、この服従関係の対外部的側面にすぎない。
―ヘルは無制限の職務服従を要求する。
⇒家産制的官吏の職務忠誠は、没主観的な任務に対する没主観的な勤務忠実では
なくて、しもべの忠誠であり、厳格に個人的に君主を志向している。
―官吏は個人的にヘル権力に服していたが故に、またその限りにおいて、他の者
に対する関係においては、ヘルの権威にあずかった。


一切の勤務規則(「行政規則」)
――ヘルの授与や恩恵に由来する・諸個人の純主観的な権利や特権、の体系を形
成する。
  ―客観的秩序や官僚制的国家生活に見られる・非人格的な目的を志向する没
主観性は存在しない。
  ―官職と公権力の行使とは、1つにはヘルの個人のために、2つには官職を恵
与された官吏個人のためにおこなわれるのであり、「没主観的な」任務に
仕えるために行われるのではない。