]『支配の社会学Ⅰ』37【家父長制的支配と家産制的支配(p.143-)の続き】


服従
――ヘルを援助する義務を負っている。
  ―義務
   ―特別の場合には、経済的に無制限
   ―戦争やフェーデの場合には、人的に無制限
―奴隷達は古代オリエントにおいては、ヘルの所有物であることを示す印を
押印されていた。
  ―隷属民は法的にはヘルの必要と裁量とに応じて、しかし事実上は慣れ
親しんだ習慣にしたがって、賦役と勤務とを提供し、敬意を示す贈物
を贈り、貢租を納め、援助を行なった。
   ―習俗も、隷属民が死後に遺した人や財産を、ヘルが自由に処分する
ことを、最初は自明のこととみなしていた。
⇒家父長制的支配構造のこの特殊なケース、すなわち、家長あるいはその他
の家従属民に土地を貸与することによって分散化された家権力を「家産制
的」支配と呼ぼう。


定性やヘルの恣意の制限
――慣行のもつ差当っては純事実的な影響力によって成立する。
  ←伝統のもつ「聖化」力が結びついてくる。
  ―異例の事柄に対するもの
   ―異例の事柄というだけでの、純事実上の摩擦・抵抗がどこでも極め
て強く起こる。
   ―家長が革新を企てるような場合における彼の周囲からのこれに対す
る非難
   ―宗教的な諸力に対する家長の畏怖
   ―義務と権利の伝統的な分配関係に不正と感ぜられるような理由のな
い干渉を加えることによって、伝統的なピエテート感情をつよく動
揺させるときは、彼自身の利益、とりわけ彼の経済的利益も、手ひ
どい報いをうけるかもしれないという恐怖心が働く。
   ⇒個々の従属者に対するヘルの全権と並んで、従属者全体に対する彼
の無力がある。
⇒法的には不安定であるが事実上は極めて安定した秩序が形成され、この秩
序は、ヘルの自由な恣意と恩恵の領域を狭め、伝統による拘束の領域を拡
張する。