『支配の社会学Ⅰ』36【家父長制的支配と家産制的支配(p.143-)の続き】


3 家産制的支配(p.154-)


オイコスの発展のこの最も単純な形式
――広大な所領において、非自由人が自己の住居と自己の家族とを
もって分与地を与えられて別居させられる、家畜(peculium〔
特有財産〕の語はここに由来する)と農具とを与えられるとき、
これは差当りは単に家共同体の分散化を意味するにすぎないこと。
→完全な家権力の内的弱化を不可避に招来する。
家長と家所属員との間
――拘束力ある契約によってゲゼルシャフト的関係を取り結ぶという
ことは本来的には起こりえなかった。
  →ヘルと服従者との間の内面的・外面的諸関係
   …ヘルの側の利害関係と権力関係の内面的構造とによって規律
されたにすぎない。
⇒この服従関係自体は依然としてピエテート=誠実関係のまま


このような基礎に立つ関係
――それ自体の内部から、権力服従者側からの双務性を求める要求を
生み出す。
  ―この要求は「事理の自然」によって「慣習」として社会的承認
を獲得するようになる。
   ―家従属者を分散的に利用する場合
    …ヘルは、広汎に、彼らの自発的な義務履行と、また常に彼
らの給付能力を維持することに、依存せざるをえない。
   →ヘルもまた、服従者に対して、法的にではないが、習俗の上
で、何らかの「義務を負う」ことになる。
    ―外部に対する保護、困窮時の援助、「人間的な」取り扱い、
「通常」の範囲での給付能力の制限


ヘルの自己需要の充足を目指すような(貨幣取得を目的とするのではな
い)支配の基盤の上においてのこのような搾取の制限
――原理的に無制限に拡がりうるような質的な需要の展開は存在せず、
ヘルの要求は、服従者の要求と単に質的に違うだけ。
→このような制限はヘルにとっても積極的に利益
―彼の支配権の安定性は勿論、この支配権から生ずる利益もまた、隷属
民の心情や気持に強度に依存しているからである。