『支配の社会学Ⅰ』27【官僚制化の諸前提と諸随伴現象(p.73-)の続き】

6 官僚制の勢力



完全に発展した官僚制の勢力
――常に極めて大きいものであり、通常の事情の下においては卓絶したのも
  ―ヘルは、行政の運営を担当している訓練された官吏に対しては、丁度
ディレッタント」が「専門家」に対するごとき地位にある。

すべての官僚制
――職業的消息通のもつこのような優位を、彼らの知識や意図を秘密にする
という手段
によって一層高めようとする。
  ―官僚制的行政の傾向=公開性を排斥する行政
  ―官僚…彼らの知識や行動を批判の目から隠蔽しようとする。


秘密化の傾向
――その領域の客観的な性質から由来している。
  ―支配団体の対外的勢力関心が問題になる場合に常に秘密化の傾向が生
じる。
   【秘密化する組織】
・外交の運営
   ・軍事行政
   ・政党の運営
   ・商業政策


しかし純粋に客観的な理由から秘密が保持されるこれらの分野をはるかに超
えて、官僚層自身の純粋な勢力関心が働く。
「職務上の機密」
――特殊官僚制的な発明物で官僚によって熱狂的に擁護される。
官僚と議会の対立
――官僚は固有の手段(「国政調査権」など)によって利害関係者から専門
知識を獲得しようとする議会の一切の企てに対して、反対闘争を行なう

  ―十分に情報を与えられていない・したがって無力な・議会の方が官僚
にとって一層都合がよい。


絶対君主
――官僚の優越した専門知識を前にしては、最も無力なもの
  ⇔立憲君主
   ―彼が被支配者の中に社会的に有力な部分と良好な関係にあるときは、
行政の運行に対して、絶対君主よりももっと大きい影響力をもってい
る。
    →立憲制にあっては行政に対する批判が公開的であるため行政の運営
を統制できる。
――専ら官僚自身による情報提供のみにたよっている。
  Ex:旧制度のロシアのツァー
    ――官僚の気にいらず・官僚の勢力関心に逆行するようなことは、ど
んな些細なことでも、長期にわたって実施しえたことは稀である


立憲制への移行
――中央官僚の力は不可避的に1人の手中に集中され、単一支配的な一人の首長
(首相)の下に従属させられる。
  ―君主の上聞に達するものはすべて彼の手を通さなければならなくなる。
   →君主を広汎に官僚たちの首領の後見下に入れる。
   ―専門知識の支配下においては、君主の実現的影響力が恒常性を取得する
のは、僅かに官僚たちの首領との不断の接触によってのみなのであるが、
この接触も官僚たちの中央最高幹部によって計画的に操縦されている。


立憲制
――議会に拠る政党首領の権力獲得欲に対抗して、官僚と支配者とを互いに1つの
利益共同体に団結させる。
  ―しかし、この理由から立憲君主は、議会内に支持をえられない限り、官僚
に対立するときは無力
官僚制的官僚に対する君主の権力的地位

昇進欲に燃えた候補者が常に存在しており、君主は取り扱いにくい独立的な官僚に
代えて容易に彼らを登用することができるという事情があるために、封建国家の場
合に比べて、また、「ステロ化された」家産制的国家の場合に比べてすら、全体と
してはやはり、はるかに強力であるからである。(p.125-)

社会的に勢力のある階層−君主が自分自身の地位の支柱として考慮を払わざるをえ
ないと考えているような階層−に属する官僚
――たえず君主の意思を実質的に完全に麻痺させることができる。


経済
官僚の専門知識より優越しているもの
――「経済」の領域における私経済的利害関係者の専門知識のみ
  ―経済の領域において正確な専門知識が直接に経済上の死活問題になるから。
資本主義時代においては、官庁が経済生活におよぼす影響は、極めて狭い枠内に限ら
れており、この領域における国家の施策は、非常にしばしば、予想も意図もしなかっ
たような方向にそれるか、あるいは、利害関係者の優越的な専門知識によって骨抜き
にされてしまう。