『支配の社会学Ⅰ』5(伝統的支配(p39-))

2 伝統的支配(p.39-)


伝統的支配は昔から存在する秩序と支配権力との神聖性、を信ずる
信念にもとづいている。
純粋型=家父長制的支配
支配団体=共同社会関係、命令者の型=主人(ヘル)、服従者=臣民
行政幹部=しもべ(デイーナー)
個人を服従させるもの=ピエテートの念
ピエテートとは

ウェーバーの云うピエテートは、大まかに云って「肉親の情」ともい
うべきものであり、それは、長者に対しては「孝悌恭順」の情として、
同朋に対しては「兄弟愛」、「肉親愛」として現れる。…およそ、没主
観的・即対象的・打算制の対立物である。(p.148)


命令の内容は伝統によって拘束されており、ヘルの方でこの伝統を無思
慮に被るときは、専ら伝統の神聖性のみにもとづいている彼自身の支配
そのものの正当性を、危殆に瀕せしめることになるであろう。(p.39)


2つの支配領域
①厳格に伝統によって拘束された領域
②自由な恩恵と恣意との領域…支配原理=純粋に個人的な見地(個人的
 な好みなど)

命令権力を規定するもの
しもべたちが臣民の従順性を期待できる範囲、しもべの個人的な誠実


行政幹部の地位の性質についての2つの相違的形式
1、行政の純家父長的な構造
2、身分制的構造
1行政の純家父長制的構造
 しもべたちの行政=完全に他律的、他首的
 物的な行政手段は完全にヘルのために、ヘル自身の直轄によって、管
 理される。
 ヘルの恣意の可能性の範囲=最も大きい。
 例:専制政治
2身分制的構造
 しもべ=ヘル個人のしもべではなく、ヘルとは独立の社会的有力者と
     みなされている人々のしもべ
 しもべの行政=限られた限度においては他首的、自律的であり、物質
 行政手段は彼らの管理化にある
 →身分制的支配
 「規律」という範疇ではなく、伝統・特権・封建的または家産制的誠
 実関係・身分的名誉および「善意」がすべて の関係を律している。
 →支配者権力はヘルと行政幹部の間で分割、この身分制的権力分割は
  行政を高度にステロ化する。


伝統的支配形態に共通する現象
 厳格に伝統に拘束された行為領域と自由な行為領域とが並存
 形式的な法が存在しないこと
 形式的な法の代りに行政や訴訟解決において実質的な諸原理が支配
 →経済との関係において重要な諸結果を伴う。


家産制的支配の法典や制定法
→「福祉国家」の精神に満たされている。
 社会倫理的諸原理と社会功利主義的諸原理との結合が支配的、法の形式
 的厳格さは破壊


伝統的支配の中での家父長制的構造を身分制的構造との相違と区別
→官僚制以前の時期についての国家社会学全体にとって重要
 →観念的文化財の担い手としての「身分」が存在したのかという問題を規定


身分制的な型=純人格的な誠実関係と、官職を授けられた騎士の身分的名誉に
       対するアピールとを重視する。Ex:封建制


行政力の多少とも確実な専有を基礎とする身分制的支配
 特殊な性質の「権原」の性格を保有家父長制に比べて、合法的支配に近い。
 家父長制における厳格な規律と行政幹部の固有権の不存在
 身分制的組織のステロ化された行政に比べて合法的支配の官職規律に近い。
 →ヨーロッパにおいてヘルの勤務に平民(法律家)を理由するということが、
  近代国家の先駆的形態をなしていた。