富永健一『近代化の理論』講談社学術文庫

近代化の理論 (講談社学術文庫)

近代化の理論 (講談社学術文庫)




近代化と産業化を全体のキーワードとし、また、「社会構造*1」と「社会変動*2」という

概念を使いながら分析していく。

近代化の諸領域には4つある。①技術的経済的側面②政治的側面③社会的側面④文化的側面

である。(p34)

この4つが伝統的形態から近代的形態へ移行するのである。ここで重要なのは4つの近代化が

相互に密接に関連しあいながら進行してきたということである。(p36)

社会学の各理論、人物を紹介・説明しながら

構造‐機能‐変動理論がどのようなものであるのかを示していく。

そこで著者の「近代化の理論*3」を提示し、社会進化の共通項・総合的視野を明らかにしていく。

近代は3つのものに特徴づけられている。(pp.342‐345)

①近代産業社会における親族集団の解体ならびに家族・親族の機能縮小という趨勢と、
 機能集団の増加ならびに組織の機能分化の進行という趨勢とは関連し合っているという事実。
②近代産業社会における地域社会の変動の方向性は地域共同体(村落共同体および都市共同体)
 の解体による地域社会の拡大、これによる国民社会と国民国家の形成
③近代産業社会における社会階層の変動の方向性は階層間の格差の漸次的縮小すなわち平準化、
 またこれにともなう階層間境界の不明確化すなわち「見える階級」から「見えない階級」へ
 の移行。
少し細かくすると
(1)家族・親族の機能縮小(2)機能集団のゾク生(3)地域共同体の解体と地域社会の拡大
(4)社会階層の平準化と「見えない」階級への移行(5)国民社会と国民国家の形成

そしてこの諸特徴を相互に関連づけながら一つにまとめるものは構造変動であり

それらの構造変動は人々の欲求水準が上昇し、これを充足するための機会を求めて構造変動が

模索された結果の産物として説明される、というものである。

次にこのような社会構造変動についての解釈をネオ社会進化理論ならびに構造‐機能‐変動理論と

接合する。

そこでは、上記の構造変動が社会システムのパフォーマンス水準の上昇、すなわち社会成長

としての環境適応能力の上昇をもたらすのである(p348)とする。

他に日本と中国の比較、情報化社会、福祉なども扱っている。

*1:社会を構成している構成諸要素のあいだの相対的に恒常的な結びつき。例:役割、制度、社会集団、地域社会、社会階層、国民社会など(p68-)

*2:動態的概念、社会の構造が変化すること(p71)

*3:歴史的諸事実相互間、およびそれらとネオ社会進化論ならびに構造‐機能‐変動理論を結びつけることによって、社会(狭義の)という限定的な対象にに焦点を合わせる分析的な視覚からではあるが、世界史の過去と現在を統一的に解釈する解釈体系