『支配の社会学Ⅰ』12【官僚制化の諸前提と諸随伴現象(p.73-)】
3 官僚制化の諸前提と諸随伴現象(p.73-)
官職がこのように近代的な形をとるに至った社会的・経済的諸前提
1 貨幣経済的・財政的諸前提
官僚制は貨幣経済の発展が前提で全特質に対して重要な意義をもっている。
しかし、官僚制の存立にとって唯一の決定的な力を持っているということで
はない。
官僚主義の歴史的実例
(a)新王国時代のエジプト:家産制的
(b)ローマ末期の帝政、ディオクレティアーヌス帝の君主制、ビザンツ
の国家制度:封建的、家産制的要素が強い
(c)ローマ・カトリック教会:13世紀以来、官僚主義が漸増
(d)始皇帝時代〜現代の中国:家産制的・プレベンデ的要素が強い
(e)絶対君主制の発展以降の近代ヨーロッパ国家、公共団体:純粋な官
僚制へ
(f)近代的資本主義的大経営(経営の複雑化):官僚制への更なる移行
――(a)から(d)は官僚に対する実物報酬を基礎とする。(つまり貨
幣経済的ではない。)しかし、官僚制的特色や影響を示している。
官僚制と自然経済との両立はエジプトに特有であるが、官僚主義と
自然経済に関連性は見ることができる。
貨幣経済的発展≠純官僚制的行政の創出のための前提
=純官僚制的行政が変質せずに存続するための通常的前提
→これが無い場合は官僚制的構造の内的本質を変化がおこる。
・実物給付から貨幣への変化要因
一定額の実物給与を支給するという形
→租税源泉やその用益を官僚が私有財産とするという方向への第一歩
実物給与=貨幣の購買力の変動から官僚を保護
=実物租税による収入の不規則化(君主権力の緊張弛緩)
→官僚は権力区域内の納税義務者へ直接に依拠するようになる。
←動揺から官僚を守る必要性(組織化が進んでいない中央権
力がとる方法)
――貢租(課税権)の質入・譲渡、君主の土地の官僚への
授与へ
→官僚が収益の中から俸給額を受取り、余剰金を君主
に渡すという仕方をとることもある。
←君主にとって不満足な結果(官僚の余剰金を着服
することなど)を生み出す。
→官僚の任命=「一定貨幣額を義務づけられて任命さ
れる」という形
――官僚は所定額を君主に引渡し、余剰を自分でとる。