佐和隆光「市場主義の終焉」岩波新書

【目次】
序章 市場主義の来し方ゆく末
第1章 相対化の時代が始まった
第2章 進化するリベラリズム
第3章 日本型システムのアメリカ化は必要なのか
第4章 「第三の道」への歩み
第5章 グローバリゼーションの光と影



読む契機があったので積読状態だったものをとりだしてきた。

社会主義の崩壊(1991年12月のソビエト連邦崩壊を契機としたもの)にも関わらず、欧州諸国に社会民主主義を標榜する中道左派政権があいついで登場したのかを説明することが本書の意図であるとする。

それは、富んだ国がマテリアリズムからポスト・マテリアリズム*1を指向するようになったからであるという。*2そこでは、時代的影響(ソ連崩壊など)や技術開発(ITなど)、環境問題(温暖化など)などが関係し、そこで様々なシステムがうまく作動するのかが重要である。

市場のシステムの不全を補うためには「第三の道*3が有効であるとする。

また、グローバリゼーションについてはそれは均質化へむけての過程であり、そこでは市場競争の結果として生じる経済格差としての「市場の失敗」*4を是正できないとする。なぜならば、グローバルな市場経済にはルール違反を監視するWTOはあっても、国家間の初期状態の格差を是正するための措置を講じる「政府」は存在しないからとする。

*1:非物質、非経済的な価値を、物質的経済的価値に優先させる、価値優先順位の移行(p63)

*2:日本では少し事情が違う。60年代マテリアリズム、80末-90初頭ネオ・マテリアリズム、90半ばポスト・マテリアリズム

*3:市場主義でも反市場主義でもない。第三の道の政治は、平等を包含、不平等を排除と定義し後者を是正することを目標とする。(p164)

*4:格差は市場に参入した際の初期状態(各主体の能力、保有する資金)の格差に依存する