松本健一「三島由紀夫の二・二六事件」、文春新書

三島由紀夫の二・二六事件 (文春新書)

三島由紀夫の二・二六事件 (文春新書)


【目次】
序章 昭和史への大いなる影
第1章 三島由紀夫北一輝
第2章 二・二六事件三島由紀夫
第3章 大本教の幻の影
第4章 北一輝昭和天皇
第5章 二・二六事件における天皇
第6章 日米戦争と天皇、および北一輝
終章 畏るべき天皇




北一輝三島由紀夫昭和天皇との三者の緊張関係において、二・二六事件という昭和の

日本人の精神史を読み解こうとしている。(P13)

三者が意識して同時代に存在したわけではない。

まず、北と三島の天皇観から話が始まる。

二者の天皇観は異なっていた。

北は天皇を国家支配の「機関、システム」と考え(P18)

三島は「絶対の価値」をおくもの(P24)としていた。

しかし、二・二六事件とこれを遂行した青年将校については北と三島は共振することが

大であったとしている(「神の死」など)。(P38)

また、大本教と2人との関係性も書かれている。

二・二六事件の中身にもふれており、なぜ、決起した青年将校たちが

「正義軍」から「占拠部隊」そして「反乱部隊」へと変わっていったかについては

政治的人間がいなかったからではないかとしている。(P134)

(革命が成功するには3つのものが必要であるとしている。1つは予言的思想家(北)、

2つ目は行動的な志士(磯部浅一)、3つ目は「果決」する政治的人間)

後半部では

ビッグスの昭和天皇評価への批判や北のリアルなパワーポリティックス観(P178)

について描かれている。



北、三島ともに「おそるべき天皇」(P205)に敗れたのであろうか。