白川一郎「日本のニート・世界のフリーター」、中公新書ラクレ

日本のニート・世界のフリーター―欧米の経験に学ぶ (中公新書ラクレ)

日本のニート・世界のフリーター―欧米の経験に学ぶ (中公新書ラクレ)

【目次】

第1章 苦闘する世界の若者(苦境に立つ先進諸国の若者たち
若年雇用悪化の背景
高失業率と共存する欧米諸国
先進諸国における若年雇用政策の特徴)
第2章 先進諸国における若年雇用政策(英国
フランス
ドイツ)
第3章 日本の若年雇用の何が問題なのか(若年雇用の実態
若年層における構造的失業率の上昇
正規雇用への「ヒステレシス効果」とは?)
第4章 変革を迫られる日本の教育・訓練システム(若年雇用政策不在の日本
構造的失業率の上昇への対応
パートタイム労働者に対する均等条件の確保
教育・訓練制度の問題点
遅れている供給側の対応
セーフティネットの必要性)



イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、アメリカを例にとり各国の雇用問題とそれへの対策をまず説明している。

各国とも問題の原因、対策が完全ではないが異なっていることがわかる。

では日本では雇用問題はどのようになっているのだろうか。

まず、有識者によって言われてきている多くの見解を3つに分類して説明している。
(P158〜P159)

①若者自身の意識が問題であるとする考え方
②景気の悪化が原因であるとする考え方
③90年代末に中高年の雇用を維持したために、若者がその犠牲になったとする考え方

②については関連性があるが、①と③は主要な原因ではないと著者は分析している。

そして、著者は中高年を含め既存の正社員に対する雇用保護規制が雇用市場に影響を与え、雇用市場が90年代後半から正規社員から非正規社員へと構造転換したことが問題であるとしている。

正規雇用と非正規雇用の間には様々な格差が存在している。

雇用保護規制(EPL)による解雇に関わる規制、賃金、雇用保険、年金、健康保険など様々なものがある(P203〜204)。

また、正規→非正規の確率もヒステレンス効果により下がっている。(P182)

著者が恐れているのは正規雇用と非正規雇用の間に、富める者と貧しいものという所得面での二極化現象が強まることである。(P180)

政府は90年代後半まで系統だった若年雇用政策を行ってこなかった。

それはP192にあるように資金の面から見てもわかる。

厚生労働省などが「若者自立塾」などを実施しているがまだまだ、若年雇用者に対する政策は始まったばかりであり
時間を賭け経験をつんでいく必要性がある。