リアリズムの大著との出会いその①、モーゲンソー、原彬久(訳者代表)「国際政治」

国際政治―権力と平和

国際政治―権力と平和


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第1章 リアリストの国際政治理論

本書は国際政治の理論を提示するものであり、主にリアリズム(あるがままの人間性と、実際に起こる歴史的過程とに対する理論的な関心に重点を置くもの)からの視点を示したものである。
第1章では政治的リアリズムの6つの原理を説明している。
①リアリズムは、政治の法則の客観性を信じている。したがって、合理的な理論を発展させる可能性を信じなければならない。また、政治において真理(客観)と意見(主観)とを識別できると考える。

②リアリズムは動機やイデオロギー、政治家の哲学的政治的所見とその政治家の対外政策との関連性という3つのものを理論の中には組み込まず、国際政治は力(パワー)によって定義される利益(インタレスト)によって動いていると考える。

③力として定義される利益という中心概念は、普遍的な妥当性を持つ客観的なカテゴリーであるとリアリズムは考える。しかし、固定した意味をこの概念に与えているわけではない。力の内容とその利用の仕方は、政治的、文化的環境によって決定されるものである。

④政治的リアリズムは政治行動の道義的意味を知っており、その道義原則は時間と場所の具体的な環境を踏まえて考えなければならないとしている。また、結果を重視するため深慮(様々な政治行動の結果の比較考量)を政治における至上の美徳と考えている。

⑤政治的リアリズムはある特定国の道義的願望と世界を支配する道徳律とを同一視しない。
全ての国家を正統に扱い、また自分達の国家を判断するように他国家を判断できるようにするために、国家全てを力によって定義された利益の概念を追求する政治的実体と見る。

⑥政治的リアリストは政治的領域の自律性を主張すると共に政治的思惟基準とは別の思惟基準が現実的には存在し、同時にそれが妥当性を持っていると理解している。
政治的リアリズムは人間性の多元的な概念に基礎付けられている。