リアリズムの大著との出会いその②、モーゲンソー、原彬久(訳者代表)「国際政治」

第二章 国際政治の科学


この書籍は2つの目的を持っている
 1つは国際政治の理解、つまり、国家間の政治関係を決定する諸力を見出してそれを理解すること、そしてこれら諸力がどのように相互作用しどのように国際政治の関係や制度に影響を及ぼすのか、ということを理解することである。

 もう1つは国際平和問題の理解、あらゆる国家の最大の関心事になった平和維持はどのようなものなのかを理解することである。


 国際政治の理解についての限界は観察者の扱わなければならない素材の曖昧さからきている。物事はすべて、何らかの類似によってまとまるがどの事例も首尾一貫していない。よって、経験から引き出される相対関係はつねに不備不完全である、という曖昧さである。
国際政治の研究者はこのような出来事を比較することにより国際政治の原理がいかなるものであるか学びとる。理解の方法としては2重の知的作業をしなければならない。
 1つ目は彼は2つの政治状況における類似点と相違点を識別する能力をもつ必要がある。
 2つ目はこれらの類似点と相違点があれこれの対外政策に対してどのような意味を持っているかを評価する必要がある。
 しかしながら、アメリカの対外政策、イギリスの対外政策の変化、ミュンヘン和解、核戦争問題など少し例を挙げただけでも上記の2つをすることはかなりの困難を伴う。
 国際政治の研究者が学び、忘れてはならないことは、国際事象は複雑であり、単純な解決や信頼できる予言は不可能であるということである。できることといえば、ある国際的状況のなかに潜在力として内在するいろいろな傾向を突き止めることである。このことによりあるものに対する指摘や評価を行うことが出来るのである。予言の不可能性は偉大な政治家(ワシントン、ピット、グランヴィル、レーニン)によって証明されているのである。

 国際平和問題の理解については、まず、アメリカを例にとり説明がなされている。アメリカは強力ではあるが、全能ではない。そして、それによる危険性は世界の政治構造における三重の革命によって増幅される。
1、ヨーロッパが中心の多数国家システム→ヨーロッパの外に中心をもつ世界規模の2極システムという変化
2、(西洋文明の)政治世界の道義的まとまり→思想や行動の2つの相容れないシステムへの分断
3、近代テクノロジーによる総力戦の可能性の拡大
上記の3つにより世界平和の維持は困難になった。

平和は2つの装置によって維持される。
1つは社会的諸力の自動調節メカニズム(バランス・オブ・パワー
2つ目は国際法、国際道義、国際世論などの権力闘争に規範的制約を課すもの
である。
しかしながら上記の2つでは平和的な枠組みの維持は困難になっている。

最後に3つの問いがなされている。
1つ目は、国際平和の維持はどのような価値を持っているか?
2つ目は、国際社会を諸主権国家から超国家的組織に変えることはどのような価値を持っているか?
3つ目は、過去を現代の諸問題に適応させようとする行動計画はどのようなものでなければならないか?
である。