内藤正典(2004)「ヨーロッパとイスラーム」岩波新書

ヨーロッパとイスラーム―共生は可能か (岩波新書)

ヨーロッパとイスラーム―共生は可能か (岩波新書)


ヨーロッパはWWⅡ後その戦後復興のために

安価な労働力として多くの移民を受け入れてきた。

そして、

その移民たちの多くはムスリム(現在、西ヨーロッパで約1500〜2000万人)だった。

しかしながら高度経済成長期が終わり低成長・高失業の時代に入ると

移民は厄介な存在としてみなされるようになった。

まさに、「狡兎死して艮狗烹らる」である。

本書では、ドイツ、オランダ、フランスでの移民(主にムスリム)の現状を紹介している。

オランダはまだましであるようだが

ドイツとフランスにおいては世俗主義(ライシテ)における政教分離原則のためにムスリム

との関係はあまり良好とは言えない。

なぜならばライシテとイスラームは両立しないのである。

イスラームの信仰には公の領域と私の領域を区別するという発想がないからである。

政治の場面でもそれぞれの理由は違えど左右両派ともに異質な文化であるイスラームに否定

的態度をとっている(スカーフ問題など)。

さらには、9.11以降イスラーム組織に関する監視や閉鎖が高まっている。

このような状況のもとムスリムイスラーム共同体に集まり不満感を高めているのである。

憎悪の連鎖を生み出す構造は出来てしまっている。

この構造が発動しないようにするためにもヨーロッパはイスラムと対話する必要性が出てき

ている。