小川忠『原理主義とは何か』講談社現代新書



【目次】
はじめに―トマス・マン、橋川文三の問いかけ
第1章 比較概念としての原理主義
第2章 米国―原理主義の逆襲
第3章 エジプト―西欧への憧憬と対抗の果てに
第4章 イラン―世界初のイスラーム革命
第5章 インド―ヒンドゥー組織化による多数派の形成
第6章 インドネシア―寛容と非寛容の狭間で
第7章 原理主義と日本
第8章 原理主義を越えるために

著者はまず「シカゴ大プロジェクト」の報告書から

原理主義イデオロギー的特徴と組織的特徴を以下の通りに説明する。

イデオロギー的特徴5点)
・近代化による宗教危機に対する反応
・選択的な教義の構築
・善悪二元論的な世界観
・聖典の無謬性の主張
・終末観的世界認識と救世思想
イデオロギー的特徴4点)
・選民思想
・組織のウチとソトとの明確な区別
・カリスマ的な指導者の存在
・厳格な規律、行動規範

そして、原理主義者は

宗教的伝統を守ると主張しつつも、それを新しい思想とイデオロギー

拠って達成しようとする。

したがって彼らが保守しようとする過去とは、保守主義者が主張するような

現代まで継承されてきた過去の伝統、価値観、習慣ではなく、

その宗教の原点となる教祖がいた時代、コーランや聖書のような聖典

書かれた時代なのである。そこでの理想とされる過去とは現世の誰もが経験した

ことのない時代であり、それゆえ「汚れなき時代」とは、想像上の過去であり

「過去」の名の下に現在まで続いてきた秩序を破壊する新しい原理を設定することも

可能になる。そのために革命理論に転化することはこうした思想構造を内包しているからである。(p22)

と説明する。


各国比較が書かれているが一つの共通点として

強い抑圧(近代化、宗教的抑圧)を受けた後のゆれ戻し

というのが見られると思った。