オルテガ・イ・ガゼット、神吉敬三訳『大衆の反逆』ちくま学芸文庫、1995


大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)

大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)


ただの大衆批判の本ではないと思いますね。てか国家についてこんなに熱く語っているとは知りませんでした。ごめんなさい。

「おまいら、優秀なんだからもっとちゃんとしてよね。」てことでしょうか。


■大衆人

大衆人は、偶然が彼の中に堆積したきまり文句や偏見や思想の切れ端もしくはまったく内容のない言葉などの在庫品をそっくりそのまま永遠に神聖化してしまい、単純素朴だからとでも考えないかぎり理解しえない大胆さで、あらゆるところで人にそれらを押し付けることであろう。・・・つまり、凡庸人が自分は優秀であり凡庸でないと信じているのではなく、凡庸人が凡庸たることの権利、もしくは、権利としての凡庸さを宣言し、強行しているのである。
p.99


■国家=運動

国家は一つの事物ではなく、運動である。国家はつねに・・・・・・から来て・・・・・・へ向かっていくものである。国家はすべて運動がそうであるように、起点と目標をもっている。・・・そこに血、言語、「自然の境界」などなんらかの物質的な特性を基礎としているかに見える一つの統一的共同体を発見するだろう。・・・ところが・・・彼らの統一の基礎のように見えた物質的な原理をつねに超克しようとしているのである。・・・その統一性は、まさに所与の統一のすべてを超克するところに存するのである。
pp.233-234

↓↓

国民国家を形成したのは血でも言葉でもなく、むしろ、国民国家こそが、初めに存在していた赤血球や音声の差異を平均化するものであるというべきである。
pp.238-239


◆ヨーロッパ諸国民国家(ネーション)の形成の3段階【pp.252-253】
①近隣者間の政治的、精神的共同体への融合化
②内部強化の時代。新国家(ステート)の枠外にいる他民族を異質化、敵視化、ナショナリズムの時代。ではあるが共存しているという現実の為に徐々に等質化していく。
③国家の完全な国内統合。昨日まで敵であった民族と融合するという事業の出現。新しい国民的理念の成熟。